【論文出版報告】東シナ海での高頻度観測が解明した梅雨前線帯の大雨メカニズム

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2024/7/1に、もてさくが共著者の一人になっている下記の論文が出版されました。

Intensive Radiosonde Observations of Environmental Conditions on the Development of a Mesoscale Convective System in the Baiu Frontal Zone

A. Manda, Y. Tachibana, H. Nakamura, T. Takikawa, A. Nishina, Q. Moteki, N. Zhao, S. Iizuka

https://doi.org/10.1029/2023EA003486

三重大学の万田さんが主著者の力作ですので、下記に簡単に紹介します。

【概要】

2022年6月19日、東シナ海で3隻の船舶による高頻度観測が行われました。目的は梅雨前線帯で発生するメソ対流系(MCS)の発達に関する詳細な環境条件を捉えることでした。この観測は、急速に発達し約6時間持続したMCSを捉え、九州西方沖で80 mm/hを超える激しい降水を引き起こしたことを明らかにしました。

メソ対流系(MCS)の強化要因
このMCSの強化は、以下の要因が重なったことで起こりました:

最下層の南風
ほぼ飽和した最下層の南風が水蒸気を供給し、条件付き不安定性をもたらしました。

中層の西風
前線面上で湿潤化した西風が積乱雲の発達を妨げるエントレインメント(空気の混入)を小さくし、浮力減少を最小限に抑えました。

CAPEと降水強化
観測結果から、CAPE(対流有効位置エネルギー)が小さな海洋上でも、最下層の南風による十分な水蒸気供給があれば、急激な降水強化が引き起こされることが示されました。

この観測結果は、MCSの発達メカニズムを解明する上で重要な知見を提供しました。特に、水蒸気供給量と浮力の関係性が明らかになり、今後の天気予報の精度向上に寄与することが期待されます。

motesaku
気象楽者 海洋研究開発機構 研究員 東京学芸大学教員養成課程 非常勤講師(地学実験・気象楽プログラム担当) 39歳 気象楽者。 2012年「梅雨前線の正体(東京堂出版,2015年現在3刷り)」を上梓し、気象学を童話的ストーリーで「文系だから・・・」と苦手意識を持つ人達にこそ伝え、楽しみ、共に考える取り組みを始める。 しかし、ただ親しみ、楽しむだけでは、天気・気象に「受け身」のまま、情報に振り回されてしまう人が多いことに気付き、「能動的」に天気と付き合い、向き合うための活動として、「サイエンスパフェ」を始める。 2013年「天気と気象についてわかっていることいないこと(ベレ出版)」を上梓し、気象学と日常生活を楽しみながら能動的に結びつけるための方法を提案する。 2014年4月「ニコニコ超会議・ニコニコ学会β」に登壇し、4万人の視聴者の前で「JAMSTEC・・・大丈夫か」と心配される。 NHK教育テレビ「学ぼうBOSAI」の出演・製作を経験し、災害情報発信の在り方を模索する中、講演依頼の増加に伴って、全ての人が災害を倒すためにできることに向き合う「災害バスターズプログラム」を立ち上げる。 生い立ちや赤裸々なプライベートはこちらを。 モテサク伝説@storys.jp

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