MJOの東進機構の仮説

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久しぶりに気象学会で発表してみたくなったので、一気に書こうとしてみたら意外と苦労した。

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MJOの東進機構の仮説
〜CINDY2011で観測された10月の事例解析から〜
*茂木耕作 海洋研究開発機構/大気海洋相互作用研究分野
CINDY2011期間で最初に発生した10月下旬のMJOの事例解析から、その東進機構について仮説を提案する。
その仮説とは、南インド洋上を東進する温帯低気圧がMJOを牽引して東進させる、というものである。
Moteki (2015, JMSJ印刷中)は、このMJO対流がインド洋上で最も強くなる際に、強い温帯低気圧がその南側を通過していたことを指摘した。
経度時間断面(図略)では、MJOと温帯低気圧の東進は、完全に同期していた。
MJOの東進に同期した温帯低気圧は、南半球のみに見られ、北半球ではむしろ低圧偏差のシグナルは西進しているため、従来議論されてきたMJOを熱源とした線形応答の理論では、この南北非対称な観測事実を整合的に説明できない。
逆に、温帯低気圧の東進によってMJOの東進を説明するとすれば、熱帯と亜熱帯・中緯度の力学場を結びつける必要がある。
下図の模式図は、JRA55によるSLPおよび850hPaの高度偏差による気圧の尾根・谷とOLRによるMJOの位置関係を示したものである。
温帯低気圧とMJOは、寒冷前線によって上昇流域が結合し、南半球中緯度から熱帯域に伸びる大規模な気圧の谷が地表から500hPaの層で形成される(b)。
温帯低気圧の東進に伴い、気圧の谷および尾根の対が東にずれて、東向きの気圧傾度力によって西風域が東に拡大する(c)。
この収束の極大となる西風域の先端が東進することによって、結果的にMJO対流の中心がインド洋から海大陸へ移る(d)。
このようなMJOの東進に同期した温帯低気圧の通過とインド洋全体の気圧場の変化は、他の多くの事例でも共通して確認されたが、MJO対流の発達する緯度の違いによって相違点もあり、統計解析による仮説検証の前に整理する必要がある。
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motesaku
気象楽者 海洋研究開発機構 研究員 東京学芸大学教員養成課程 非常勤講師(地学実験・気象楽プログラム担当) 39歳 気象楽者。 2012年「梅雨前線の正体(東京堂出版,2015年現在3刷り)」を上梓し、気象学を童話的ストーリーで「文系だから・・・」と苦手意識を持つ人達にこそ伝え、楽しみ、共に考える取り組みを始める。 しかし、ただ親しみ、楽しむだけでは、天気・気象に「受け身」のまま、情報に振り回されてしまう人が多いことに気付き、「能動的」に天気と付き合い、向き合うための活動として、「サイエンスパフェ」を始める。 2013年「天気と気象についてわかっていることいないこと(ベレ出版)」を上梓し、気象学と日常生活を楽しみながら能動的に結びつけるための方法を提案する。 2014年4月「ニコニコ超会議・ニコニコ学会β」に登壇し、4万人の視聴者の前で「JAMSTEC・・・大丈夫か」と心配される。 NHK教育テレビ「学ぼうBOSAI」の出演・製作を経験し、災害情報発信の在り方を模索する中、講演依頼の増加に伴って、全ての人が災害を倒すためにできることに向き合う「災害バスターズプログラム」を立ち上げる。 生い立ちや赤裸々なプライベートはこちらを。 モテサク伝説@storys.jp

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