梅雨前線、実は2本あったという話〜水蒸気前線の発見〜

梅雨の時期になると天気予報でよく聞く「梅雨前線」。5月から7月の天気図で、東西に停滞前線の記号で描かれる前線のことです。 梅雨の長雨をもたらす「梅雨前線」は、天気図上では、とりあえず1本だけ描いてあります。 が! 実は、同時に2本できるてることがあるって知ってました? 今から20年前、モテサクは、名古屋大学の博士課程で梅雨の研究をしていました。 そのときに出した2004年の論文で、従来の梅雨前線とは別に「水蒸気前線」という新しい前線が発見した、という主張を展開しました。 あれから20回の梅雨をずっと観察して改めて見直すと、これがやっぱり改めて面白い話なので、ちょっと整理してみました。 もとになっている英語の原著論文はこちらとこちらです。 日本語の解説はこちらとこちらです。 そもそも前線って何だっけ 前線っていうのは、簡単に言うと「性質の違う空気の塊がぶつかる境界線」のことです。 普通の前線は、冷たい空気と暖かい空気がぶつかるところにできます。冬によく聞く「寒冷前線」なんかがそうですね。温度差があるところに前線ができる、これが基本的な考え方でした。 梅雨前線の不思議な特徴 ところが梅雨前線って、ちょっと変わってるんです。 温度差はそんなにないのに、なぜか前線ができて、しかも大量の雨を降らせる。 しかも、天気図で描かれる前線記号をまたいで、南北に数百kmの広い範囲に。 これ、気象学者の間でも長年「なんでだろう?」って思われてたんですね。 で、色々な人が研究して、梅雨前線は温度差は普通の前線より小さいけど、「水蒸気の量の差」は明瞭だ、という特徴がわかってきました。 湿った空気と乾いた空気の境界線、それが一般的に言われる梅雨前線の特徴です。 解像度を上げたら、もう1本見えてきた ここからが本題です。 昔は、気象データの解像度が低かったので、梅雨前線を「太い帯」として見ていました。東西に伸びる幅広い雨雲の帯、みたいなイメージです。 でも2000年ごろのモテサクが梅雨の研究を始めた頃から、コンピュータの性能と気象モデルの性能が急激に上がって、もっと細かく天気を見ることができるようになりました。 解像度は100kmくらいで見ているたのが、5〜20kmくらいまで一気に上がってクッキリ見えるようになったんです。 そしたら、なんと、その「帯」の中に2本の「線」が見えてきたんです。 2つの前線の正体 1本目は、従来から知られていた「梅雨前線」本体。これは北側のやや冷たく乾いた空気と、南側の暖かく湿った空気の境界線です。温度差は弱いけど、ちゃんとあります。 そして2本目が、モテサクが論文の中で新しく名付けた「水蒸気前線」。 これが実は、暖かい空気同士の境界なんです。温度差はほとんどない。 じゃあ何が違うかというと、片方は大陸から来た湿った空気、もう片方は海から来た湿った空気。 同じ湿った空気でも、大陸と海では水蒸気の量がかなり違うんですね。 その境界線が「水蒸気前線」というわけです。 なんで2本あると雨が降りやすいの? 面白いのは、この2本の前線が重なったり離れたりしながら、複雑に相互作用することです。 大陸と海では地面の粗さが違うので、同じ南西風でも風速に差が出ます。その風速差で空気がぶつかって上昇気流ができる。そこに大量の水蒸気があるから、雨雲が発達しやすくなるんです。 2本の前線があることで、雨を降らせるメカニズムがより複雑になっているというわけです。 とくに、北側にある梅雨前線の本体が、南下していくときは、雨が急激に強くなりやすい。 それは、南側の水蒸気前線とぶつかったときに、一気に雨雲に供給される水蒸気の量が増えるからです。 まとめ:見方を変えると新しいものが見える この話を思い出しながら改めて面白いと思うのは、「解像度を変えると違うものが見える」という点です。 遠くからぼんやりと1本の太い帯だと思って分析することも大事な見方です。 でも、実は近づいて解像度を上げると、2本の細い線の組み合わせだった。 数値モデルというテクノロジーの進歩で、今まで見えなかったものが見えるようになって、自然現象の理解が深まる。 これって、気象学に限らず、いろんな分野で起きていることなんじゃないでしょうか。 梅雨のジメジメした季節、天気予報で「梅雨前線」って聞いたら、「ああ、あれ実は2本あるんだよな」って思い出してもらえると嬉しいです。 自然って、知れば知るほど奥が深いですね。

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冬のスマトラ沖で起きた生物フェスティバル~大気と海のコラボ!

こんにちは!今日はこんなことを書きたいと思います。JAMSTECの堀井孝憲さんが主著者で3 月 13 日に公開されたばかりの論文「2017 年 12 月にスマトラ島南西で観測された大規模風力に対する海洋の生物物理応答」を紹介します。僕(モテサク)も研究チームの一員として名前を載せてもらいました。 「風が弱いのに魚が集まる?」というギモン 海の栄養分は、ふつう**“湧昇(ゆうしょう)”**と呼ばれる現象で運ばれます。岸に沿って風が強く吹くと、下から冷たい水がグッと湧き上がり、植物プランクトンがモリモリ育ちます。ところが 2017 年 12 月のスマトラ島沖では、湧昇に向かない北西風が吹いていたのに、海の中ではプランクトンの元気な信号がドーンと観測されました。うーん、なぜ? 一般論への「ちょっと待った!」 教科書的には「強い沿岸風=栄養アップ」と覚えます。でも、 「遠くの風が海を動かすこともあるのでは?」 「表面は何も起きてなくても、深いところでは大変身しているかも?」 という視点が抜けがちです。今回の研究は、そこに切り込みました。 研究の3ステップ 28 日間のがっつり定点観測  JAMSTECの観測船「みらい」がスマトラの沖合 90 kmに停泊し、3 時間おきに水温・塩分・栄養塩・クロロフィルを計りました。おかげで、海の“呼吸”を時間ごとに追いかけられました。 サーモクライン※が浅くなった!  途中から「暖かい表層」と「冷たい深層」を分ける境目(サーモクライン)が約 20 mも持ち上がりました。これで深い栄養分が光の届く層に近づき、プランクトンが増えたのです。  > ※サーモクラインをざっくりいうと、「温度が急に変わりだす深さの境目」です。 犯人は遠くの“ケルビン波”  12 月上旬、赤道インド洋の真ん中で吹いた東風が海面をぺちゃんこに押しました。この刺激がケルビン波となって東へ進み、スマトラ沿岸で海面を下げ、サーモクラインを持ち上げました。つまり「遠隔操作」で栄養分がアップしたわけです。 「ケルビン波って何?」を3行で 地球が自転する影響で、海の中の大きなうねりが移動するしくみです。 赤道上や島の沿岸に沿って東に進みます。 だからインド洋の“遠い場所で吹いた風”の影響でもスマトラ島沿岸の海を揺さぶれるのです。 衛星には映らなかったヒミツ 「じゃあ衛星写真で見えたの?」と思うかもしれませんが、答えはNO。雲が多くて光学衛星が使えず、プランクトン増加は“海の中”限定イベントでした。現場観測の大切さがよくわかります。 とはいえ、まだナゾも どうして栄養分が出たのに表面クロロフィルは弱めだったのか? ケルビン波と局地風が合体したら、もっと大きな湧昇になるのか? 答えはこれからの課題ですが、「遠隔風×波×海の層構造」のタッグがカギだとわかりました。 というわけで 「教科書でよく知られた現象」がいつも成り立つとは限りません。条件によっては、遠く何千キロも離れた場所で吹いた強風が“海の中の大きなうねり”を作って、海中の栄養ポンプを駆動し、魚たちの食卓を整えることだってある、そんなことを調べた研究です。 スマトラ沖のプランクトン騒動は、“見えない力が海を生かす”という新しい視点をくれました。次に海を眺めるとき、水平線の向こうから届く波のメッセージに思いをはせてみませんか?それだけで、ちょっとワクワクする海の授業が始まります。   というブログを有名ブロガーの「けんすう」さん風にしてもらうようにChatGPTに頼んで書いてみました。 原著論文の出典リンクはこちらです。 よかったら読んでみてください! 上記の内容をClaude でグラフィックレコードにしてもらったサイトがこちらです。

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【論文出版報告】ジャワ島に豪雨を引き起こす強風の正体

2024/11/24に、もてさくが書いた下記の論文が出版されました。 Vertical structure and occurrence patterns of the cross-equatorial northerly surge under different ENSO and MJO phases Qoosaku MOTEKI, Scientific Reports volume 14, Article number: 29116 (2024) 2021年1月から3月、世界的なコロナ禍の真っ只中で、インドネシアの気象庁とJAMSTECが共同して、「かつてない制約条件下であっても、やれるだけのことをやりきる」という覚悟のもと実施した気象観測プロジェクトYMC-CSO2021観測の成果です。 世界中で移動が制限されている中で、インドネシアまで観測機材の輸送が間に合うのか、観測が始まってもインドネシア現地のスタッフが観測現場まで通うことが許されるのかさえ確証がなく、データが取得できただけでも奇跡じゃないかと思うほどの状況でした。 WhatsAppチャット(LINEみたいなヤツです)で昼夜問わず、なんとかするための全てのアイデアと、上手くいったり、いかなかったり、次の手段を考えたりのやりとりが続き、無事事故なく終了してから3年。 多くの方がすでにほかの成果を出していますが、もてさくもそれに続いて、自分なりに納得のいく結果を一つ示すことができました。 【要約】 海洋大陸地域の気象現象「赤道越え北風サージ(CENS)」について、新たな研究成果が報告されました。YMC-CSO2021観測データを用いた詳細な分析により、以下の重要な特徴が明らかになりました: 発生メカニズム:ジャワ島南方海上での気圧低下により南向きの気圧傾度力が増大することで発生します。 発生時期と継続期間: 1月と2月に全体の80%以上が集中 通常1~4日間継続 気候条件との関連: ラニーニャ年に発生頻度が顕著に増加 MJO位相4~7の期間に87%が集中 特筆すべき点として、CENSはジャワ島の降水を強化する一方で、スマトラ島では降水を弱める効果があることが判明しました。この研究は、海洋大陸地域の降水変動メカニズムの理解を深める重要な成果となっています。 From January to March 2021, in the midst of the global COVID-19 pandemic, the Meteorological, Climatological, and Geophysical Agency of Indonesia (BMKG) and JAMSTEC joined forces to carry out the YMC-CSO2021 observation project. This project was undertaken with the determination to “do everything possible under unprecedented constraints.” Amid worldwide travel restrictions, there was no guarantee that observation equipment could be transported to Indonesia on time, or even that local…

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【論文出版報告】東シナ海での高頻度観測が解明した梅雨前線帯の大雨メカニズム

2024/7/1に、もてさくが共著者の一人になっている下記の論文が出版されました。 Intensive Radiosonde Observations of Environmental Conditions on the Development of a Mesoscale Convective System in the Baiu Frontal Zone A. Manda, Y. Tachibana, H. Nakamura, T. Takikawa, A. Nishina, Q. Moteki, N. Zhao, S. Iizuka https://doi.org/10.1029/2023EA003486 三重大学の万田さんが主著者の力作ですので、下記に簡単に紹介します。 【概要】 2022年6月19日、東シナ海で3隻の船舶による高頻度観測が行われました。目的は梅雨前線帯で発生するメソ対流系(MCS)の発達に関する詳細な環境条件を捉えることでした。この観測は、急速に発達し約6時間持続したMCSを捉え、九州西方沖で80 mm/hを超える激しい降水を引き起こしたことを明らかにしました。 メソ対流系(MCS)の強化要因このMCSの強化は、以下の要因が重なったことで起こりました: 最下層の南風ほぼ飽和した最下層の南風が水蒸気を供給し、条件付き不安定性をもたらしました。 中層の西風前線面上で湿潤化した西風が積乱雲の発達を妨げるエントレインメント(空気の混入)を小さくし、浮力減少を最小限に抑えました。 CAPEと降水強化観測結果から、CAPE(対流有効位置エネルギー)が小さな海洋上でも、最下層の南風による十分な水蒸気供給があれば、急激な降水強化が引き起こされることが示されました。 この観測結果は、MCSの発達メカニズムを解明する上で重要な知見を提供しました。特に、水蒸気供給量と浮力の関係性が明らかになり、今後の天気予報の精度向上に寄与することが期待されます。

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モテサク、1年半ぶりにオフライン研究発表は震災対策技術展@横浜

久しぶりに人前で研究発表しました❗ こちら、震災対策技術展という会議にご招待頂き、45分枠でお話しました。 全然知らない人だらけでしたけど、割と好評でたくさんお友達できました 「令和2年7月豪雨をもたらした梅雨前線の異常な長期停滞の原因」 https://youtu.be/Mk2m2apyi_E スライドはコチラ Googleスライドにコメント頂けます。 お気軽にどうぞ このお話のもとになったのは、このブログで昨年の豪雨発生直後に書いた内容。 コチラと 【7/4熊本南部での豪雨】〜線状降水帯の停滞が豪雨災害を引き起こす〜 投稿日 2020年7月5日 コチラ 梅雨前線停滞1週間超えは黄海高気圧のせい 投稿日 2020年7月11日 です。

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モテサク、初のオンライン気象学会発表の資料公開

スマトラ西岸沖における直接観測を用いた海面水温格子点プロダクトの検証 https://docs.google.com/presentation/d/1po7YaDYcnsJmy-vfz8rM9GPR1m8VqaXVg2Meu9zPk5k/edit?usp=sharing 資料は、Google スライドで現在作成中です。下記の日時までに完成版となります。完成版前も適宜、閲覧し、コメント追加も可能です。お名前、所属を明らかにして頂ける方であれば、Google Meetでのディスカッションを適宜お受けします。 [10月29日(木)] 15:00~17:00 オンデマンド(ポスター・スライド)セッション B2P大会第4日 [10月28日(水)] 13:00~16:00 オンライン・口頭・セッション

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梅雨前線停滞1週間超えは黄海高気圧のせい

気象庁も梅雨前線の停滞期間が異常に長いことを指摘している。 モテサクも同じ見解だけど、言い換えると、黄海高気圧の定在が異常に長い、といえる。 「黄海高気圧」と固有の名前を付けて呼び、存在を認識したのは、モテサク書いた2012年の論文によるものだけど、まだ一部の予報士さんが使ってくれてるだけで、あまり広まっていない。 でも、普通に天気図眺めてるだけで見えるものなので、専門知識がなくても簡単に見つけられて、梅雨前線の停滞に関する判断指標として使うことができるので、やってみてください。 今後も前線停滞、線状降水帯発生が続く見込みですが、個別の細かい積乱雲を位置まで正確に予報するのは、通常よりも難しい反面、黄海高気圧の有無は確実に予報に出てくるはずです。 “気象庁の中本能久・予報課長は「今年は同じ場所に停滞する時間が長い。ここまで長く続くのはあまり経験がない」” 梅雨前線停滞「経験ないほど長い」 7日も広範囲に大雨:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASN766T61N76UTIL02V.html 黄海高気圧のインデックスを定義して、時間と緯度の断面を作るとこうなります。

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【7/4熊本南部での豪雨】〜線状降水帯の停滞が豪雨災害を引き起こす〜

2020年7月4日未明から朝にかけて熊本県や鹿児島県では、数十年に一度のこれまで経験したことのないような大雨となり、気象庁は大雨特別警報を発表しました。今も被害は進行中ですが、雨量は24時間で400mm以上となる地点が複数あり、球磨川の氾濫によって熊本県の人吉市や球磨村などで広く浸水したり、土砂崩れが起こるなど7月5日の時点で既に大きな被害が生じています。 梅雨前線に伴う大雨特別警報が出た近年の豪雨としては、平成29年7月の「九州北部豪雨」、平成30年7月の「西日本豪雨」があり、いずれも「線状降水帯の停滞」が大きな原因となっています。 ここでは、線状降水帯がなぜ「数十年に一度」クラスの大雨にをもたらすのか、改めて順を追って整理します。 線状降水帯とは何か? 線状降水帯とは、積乱雲が数十km以内の幅で長く連なりおよそ100km以上の長さに伸びた結果、降雨域が線状に細長く伸びて見えるものを指します。降雨強度や幅、長さについて厳密な数値的定義があるわけではありませんが、たとえば時間雨量30mm以上の降雨強度(バケツを引っくり返したようだと感じ、寝ている人の大半が気づき、道路が川のようになる激しい雨)が、「線状に100km以上伸びている降水帯」として見ると、誰でも降水分布データから見つけることができるはずです。 なぜ線状に降水帯が連なるのか? 強い雨をもたらす積乱雲は、実は一つ一つは、寿命が1時間程度で大きさも10㎞四方がせいぜいです。従って、たった一つだけ、非常に発達した積乱雲がたまたまできただけでは、豪雨になることはありません。次々にたくさんの積乱雲が同じ場所ででき続け、それが同じ経路で移動しながら発達した結果として、「線状降水帯」になります。 では、なぜ、積乱雲が同じ線に沿って綺麗に列をなし、降水域が線状になるのでしょうか? 図1に示すように、「線状降水帯」の中で積乱雲の列が維持される仕組みは、「バックビルディング(後方形成)」とよばれます。列をなした積乱雲を横から見た場合に「積乱雲が発生した地点を後ろ(図の左側)」とし、「移動して発達した先の地点を前(図の右側)」とすると、新しい積乱雲が後方で発生し続ければ、前方の積乱雲が衰弱して雨が弱まりかけても、常に後方から次の積乱雲がまた強い雨を降らせる、という積乱雲の世代交代が維持されます。このような積乱雲の「バックビルディング(後方形成)」が起こる条件が整うと、線状降水帯が長時間維持されることになります。 図1 バックビルディング(後方形成)の模式図。 図2で、具体的に熊本南部で7月4日未明に大雨がもたらされた際の気象庁レーダーによる降水分布を見てみましょう。梅雨前線は、おおよそ北緯32度の緯線に沿って停滞しており、太平洋高気圧からの湿った西南西風と黄海高気圧(黄海の冷たい海面水温で冷やされて形成される高気圧)からの冷たい西北西風の地表収束線が継続的に上昇流を生み出します。 その上昇流によって積乱雲はどこでも発生できる状況ではありますが、より水蒸気が多く供給される東シナ海上で発生し始めるので、熊本県の200〜300km西の海上で強い降水域がポツポツと散在して現れているのが分かります。それらがほぼ東に進みながらより強い降水域へとまとまっていき、線状降水帯となります。このような西側(後方)で次々に新しい積乱雲が生じ、発達しながら東へ進むというサイクルが10時間前後維持されていました。 単純に見積もれば、時間雨量50mmが10時間積み上がっていくと、すなわち総降水量500mmとなり、各地点で24時間雨量400mm超という値がおおよそこの線状降水帯の停滞で説明されます。 図2 気象庁レーダーによって観測された熊本県南部で豪雨が発生していた際の降水分布(令和2年7月4日・日本時間午前2時15分)。気象庁のホームページよりダウンロードしたレーダー解析雨量分布に一部加筆。 なぜ線状降水帯が南北移動しなかったのか? 図3 気象庁による熊本県南部で豪雨が発生していた際の地上天気図(令和2年7月4日・日本時間午前9時)。気象庁のホームページよりダウンロードした天気図に一部加筆。 線状降水帯が、同じ緯度で停滞し続ければその停滞時間の長さだけ降水量が積み上がり、豪雨となる、ということがお分かりいただけたでしょうか?しかし、どんなに強い線状降水帯が形成されたとしても、短時間で異なる場所へ移動している場合は、総降水量は大きくなりません。従って総降水量がなぜ増えたのかを考える上では、「同じ緯度で停滞し続けてしまうのはなぜなのか?」ということが重要な問題になります。 図3は、熊本県南部で豪雨が発生していた際の地上天気図です。黄海からの冷たい空気の流れと太平洋南方から暖かく湿った空気の流れが、梅雨前線を南北方向に挟んで2つの高気圧によってもたらされています。九州付近の1004hPaの等圧線に注目すると、ほとんど緯線に沿うような東西方向に伸びていて、太平洋高気圧は多少東に移動しても南側の気圧配置がほとんど変わらない状況だと言えます。 一方で、梅雨前線の北側の黄海高気圧は、黄海の冷たい海面水温によって冷やされて形成されているので、もともと位置が固定されて動きにくい性質を持ちます。このように、梅雨前線を挟んだ2つの高気圧による気圧配置を広い視野で見てみると、東西方向へ多少のずれがあっても、梅雨前線の南北方向の位置がほとんど変わらない状況であることが分かります。 したがって、東シナ海から九州、西日本にかけての広い範囲で見たときに、南北の高気圧の位置関係は7月3日から4日にかけてほとんど変化せず、梅雨前線の位置は固定されてしまいました。このような広範囲で見渡した際の条件が変わらない中で、線状降水帯がバックビルディングによって維持されると、強雨域の南北方向の位置が固定されてしまいます。 なぜ九州なのか? 7月5日現在までで梅雨前線は、西日本の太平洋側にかけて東西に伸びている状況が続いています。それによって九州以外の地域でも雨量は多くなっていますが、やはり九州での雨量は他地域に比べて抜きん出ています。 図3の天気図でもう一つ注目すべき特徴は、九州北東部に解析されている小さな低気圧(メソ低気圧)です。東西に伸びる梅雨前線は、西でも東でも同じ条件が整っているわけではありません。東西に伸びる前線上をひっそりと東へ進んでいるこのメソ低気圧は、大雨を発生において非常に重要な特徴の一つです。 太平洋高気圧から流れ込む暖かく湿った空気は、メソ低気圧の西側でより強く加速されるため、九州付近における時間あたりの水蒸気の供給量が著しく増大していると考えられます。これに加えて、東シナ海南部は、黒潮の流路上で25度以上の高い海面水温により、地表の水蒸気の絶対量が非常に多くなります。 「地表風速がメソ低気圧の西側で著しく増大する」ということが、もともと水蒸気の絶対量が多い九州西方の海上に対して作用すると、積乱雲の発生数が多くなっても長時間の水蒸気供給が可能となり、線状降水帯が持続しやすくなります。 こうした条件は、他の地域でも揃うことが有りえますが、九州西部において豪雨の頻度が高いのは、やはり条件が揃いやすいということによります。 まとめ 線状降水帯とは? ・積乱雲が数十km以内の幅で長く連なりおよそ100km以上の長さに伸びた結果、降雨域が線状に細長く伸びて見えるもの。 なぜ線状に降水域が連なるのか? ・次々にたくさんの積乱雲が同じ場所ででき続ける「バックビルディング(後方形成)」が起こる条件が整うと、同じ経路で積乱雲が移動しながら発達した結果として、線状に降水帯が連なる。 なぜ線状降水帯が南北移動しなかったのか? ・梅雨前線を挟んだ南北の2つの高気圧がほぼ固定されており、7月4日の九州南部における気流の条件がほとんど変化せず、線状降水帯の位置を動かす要因がなかった。 なぜ九州なのか? ・九州北東部のメソ低気圧の西側で風が加速される効果が、もともと水蒸気の絶対量が多い九州西方の海上に対して作用すると、線状降水帯への水蒸気供給量が著しく大きくなる。

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各都道府県で新型コロナ対策パーソナルサポートのLINEアカウントが開設されています

現在、陽性患者の感染集団が把握されていますが、「無症状で健康な人」の分布を対策班に教えてあげる事で、感染経路対策がより効果的に行われるようになり、我々への感染拡大が防がれる可能性が高まります。 その目的で下記にリストする各都道府県ごとに公式の「新型コロナ対策パーソナルサポート」がLINEアカウントが開設されています。 特に、基礎疾患をお持ちの方は登録しておくと、いざという時により早い適切な対応が取りやすくなります。 落合陽一【緊急検証】東京封鎖“ロックダウン“は起こるか? https://youtu.be/qHaLhNvyA2M慶應義塾大学医学部の宮田裕章教授が枠組みを組んで、神奈川県が全国に先駆けて取り組んでいる仕組みで、他県も順次導入されるとのこと。ご家族、ご親族にもお知らせ頂くと役立つと思います。 公式LINEアカウントに登録し、トークメニューから質問を選択すると、マスクとかトレペの在庫・生産状況などを自動チャットで答えてくれます。 神奈川県 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ga4/bukanshi/line/index.html 東京都 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/coronasodan.html 埼玉県 http://www.pref.saitama.lg.jp/a0701/covid19/line_saitama-official-account.html 福島県 https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045c/covid19-line.html 秋田県 https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/48438 鳥取県 https://www.pref.tottori.lg.jp/289689.htm 愛知県 https://www.pref.aichi.jp/site/covid19-aichi/line-1.html 京都府 https://www.pref.kyoto.jp/gyomusuishin/novelcoronavirus-line.html 兵庫県 https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk26/covid19_line.html 滋賀県 https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kurashi/ict/310749.html 福井県 https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kenkou/corona/coronaline.html 三重県 https://www.pref.mie.lg.jp/YAKUMUS/HP/m0068000078.htm 香川県 https://www.pref.kagawa.lg.jp/content/dir1/dir1_6/dir1_6_1/covid19_lineaccount.shtml 愛媛県 https://www.pref.nagano.lg.jp/hoken-shippei/kenko/kenko/kansensho/joho/corona-line.html 島根県 https://www.pref.shimane.lg.jp/bousai_info/bousai/kikikanri/shingata_taisaku/new_coronavirus_portal.html 福岡県 https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/covid19-linepersonalsupport.html 長崎県 https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/hukushi-hoken/kansensho/corona_nagasaki/corona_nagasaki_tool/ 長野県 https://www.pref.nagano.lg.jp/hoken-shippei/kenko/kenko/kansensho/joho/corona-line.html 岐阜県 https://www.pref.gifu.lg.jp/kinkyu-juyo-joho/shingata_corona_line.html 宮城県 https://www.pref.miyagi.jp/site/covid-19/line.html

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