学術講演動画公開の3つのメリット

まずは茂木の学会発表の公開資料を御覧ください. 2012年度日本気象学会秋季大会 「CINDY期間中の解析誤差分布の特徴」 スライド:http://slidesha.re/PJCAHD 講演動画(7分):http://bit.ly/PJCeAL 議論を正確かつ客観的に振り返ることができる →報告書等を書く労力が最小化できる 客観解析データの誤差が大きくなるのは, 雲がたくさんできて, 大気が乱れていることを表す, という点をもう少し丁寧に話せたら良かったと思います. 僅かな質疑応答の時間を無限大にすることができる →講演参加費に対する利益を最大化 みなさん,お気づきの点,疑問,異なるアイデア, なんでもお寄せ下さいませ(・∀・) それが多ければ多いほど, 講演する権利に8000円を払って申し込んだ僕にとっての利益 は,最大化される,と言えます. 聴講した人にとっても, 聴講する権利に払った4000円 の投資に対するリターンが最大化される,と言えます. 無料で動画観られるなら,聴講料と旅費払って, ライブに行った人は,損じゃないか? という声もたまに聞きます. 野球でもサッカーでも実際の試合を一生懸命応援に行っている人は, テレビ中継でタダで観られるのを知ってて足を運んでるわけですが, それは損なのでしょうか? 僕はそうは思いませんが,みなさんはどうですか? あくまでその場に足を運んで, 同じ空気を吸い, 同じ時間を過ごす, 動画には映らない時間で会話を交わしたり, 別の人のポスターの前で一緒に激論を交わしたり, 僕はそうしたことに最大の価値を感じているので, 無料で参加しない人が動画を観られたとしても, 全く損したと思いません. むしろ,動画を観て,学会の楽しさの一端に触れ, いつか参加しようと思う人が一人でもいて, その人と学会でアイデアを交わせる日が来る可能性を考えれば, 得すること以外にイメージが湧きません. っていうのはポジティブ過ぎますかね・・・ ポジティブ・オンリー・テイク・ア・リスク が売りですんでね. 何の苦労もなく一般社会へのアウトリーチが出来る – →一般社会からの信頼感を最大化 信頼頂くために絶対的に必要なことは, 「隠さないこと」 だと僕は思っています. 隠していないものを,見るか,見ないか,それは, それぞれの興味や立場によって勿論自由ですが, 公開せずに信頼されることは無理だと思います. 「アイデアを盗まれたらどうする?」と心配して 下さる方もいますが,スライドとわずか7分の話を 聞いただけで盗まれて追い抜かれる程度のものなら, そんなのはプロの仕事なのか?という気もしています. ただし,製品の特許に関わる,とか,僕にとっては, 実際の体験のない世界など,必ずしも当てはまらない 分野や領域があることもまた事実です. TEDのようにアイデアを広げることに至上の価値がある, そういうテーマもあれば, 特許のようにきちんと守ることが結果的に世界を良くする, という場面もあります. 地球科学という分野の性質は基本的に前者だと僕は思いますが, それは勿論絶対のものでもありません. でも何も考えずに何となく根拠も実践もなく,公開を怖がる, というのは,違うな,というのが今の僕の考えです. 今は,ただ, ”やってみなくちゃ分からない,答えは大科学実験で!” という実験の最中なので,答えは僕にもありません. 実験がまとまったらまたご報告します. 実験に際してのアドバイスなどありましたら,是非お寄せ下さいませ(・∀・) この議論に付き合ってくれた九州大学修士課程の林未知也くんが, ”危険”についてもキチンと見据えた秀逸な考察を 下記のブログにまとめてくれています. 研究発表動画Web公開の魅力と危険 あわせて御覧くださいませ.

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ジョブズ関連本で一番好きです.

昨年から10冊ほど読んだジョブズ関連本の中で, これが一番好きです. 多くの関連本があるなかで, 有名なエピソードとは一線を画したシーン描写が満載です. その独自性の高さは,そのまま説得力の高さでもあります. 10章もある豊富な内容をシンプルに書くなんてできるのかな, と思ったりしましたが,清々しいまでにシンプルです. 各章を構成する段落がシンプル. 各段落を構成する文章がシンプル. 各文を構成する表現がシンプル. そりゃあ,何章だろうとシンプルだわ. にも関わらず,ここまでシンプルに削ぎ落とす推敲を重ねていながら、 なお謙虚さを全く失っていません. 「どれほど推敲し、刈りこんでいても、 もう余分な語はないと思える文章に私はまだ出会ったことがない.」 「必死になって物事をじっくりと見れば、 いつでもどこか削れるところが見つかるはずだ.」 「アイデアを本質まで削ったときにだけ、 それは誇れるものになるのだ.」 全ての文章がこの調子です. これを書いていたら,3回目をまた読み直したくなってきました. オススメ過ぎて知り合い全員に配りたいくらいです. Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学 作者: ケン・シーガル,林信行,高橋則明 出版社/メーカー: NHK出版 発売日: 2012/05/23 メディア: ハードカバー 購入: 7人 クリック: 506回 この商品を含むブログ (56件) を見る

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易しくて優しい科学の言葉

地球の声に耳をすませて ?地震の正体を知り、命を守る? (くもんジュニアサイエンス) 作者: 大木聖子 出版社/メーカー: くもん出版 発売日: 2011/12/22 メディア: 単行本 クリック: 49回 この商品を含むブログ (4件) を見る 5つの星では表現できないほど,私はこの本に感動しました. とはいえ,読み手によって得るものや印象が様々だろうと思います. しかし,どんな読み手にも有意義な「何か」を持っている本だと思います. 以下に,読み手の立場ごとにそれぞれにとっての この本の素晴らしさを想像してみようと思います. 小中高生のみなさん: 読書感想文の課題図書としてこの本に出会えるみなさんが とても羨ましいなと思います. この本の読書感想文集みたいなのが出るなら, 僕は値段に関わらずすぐ買うと思います. これだけの優しさと易しさを兼ね備えた科学の言葉に何を感じるのか, 心から惹かれます. 著者はある本をきっかけとしたのと同じように, 将来,何人かのみなさんが地球科学の入り口をくぐるのだろうな とはっきり想像できます. 大人の文系のみなさん: 勝手なカテゴリは相応しくないかな,とは思いましたが, 「勿論興味はあるけど自分は文系だから こういう科学的説明って理解できるのか不安」 っていう感覚を抱きがちな方を想像しています. この本は安心して「理解できる」言葉で綴られていることは 間違いありません. でも,この本のもっと魅力だと思えるところは, 「とても感情的に生きている科学者と 対等な目線で話しているような感覚」 かもしれません. 大人の理系のみなさん: 乱暴なカテゴリは相応しくないかな,とは思いますが, 「何かの仕組みを理解し, 何かにつけてそこに根付く論理をとても大事にする」 っていう感覚が当てはまる方を想像しています. この本は表面的なことを「易しく」説明しているのではありません. 改めて考えてみると「知ってはいた」けど, 「理解できていなかった」たくさんのことを 真摯に伝えてくれる本です. 何かの分野の科学者のみなさん: 私自身は実はここに当てはまります(気象学). 私はこの本の「易しく優しい言葉」に, 最初の数ページから「著者の迫力」を感じました. 一体どれだけの場面をくぐり抜けて 鍛えられたらここまで簡潔で平易で 優しさを持った言葉を作り出せるのだろう,と. 「今伝えるべき内容がしかるべき相手に伝わるような言葉を 作るにはどうしたらいいのか?」 同業の専門家相手にすら私はそれにとても苦労していますし, 多くの科学者がそうだと思えます. そうした視点からこの本の「易しく優しい言葉」を観ると 「著者の迫力」を誰もが感じとれると思います. 思慮のきっかけ,知的興奮,感動,将来すべきことへの前向きな精神, 様々なものが脳内を駆け巡る感覚で一気に読んだ後, 自分より年が下の著者に対して素直に深い敬意を覚えました.

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この「体験」にわずか1890円の「参加費」は安すぎる

フィールドで学ぶ気象学 (気象ブックス) 作者: 土器屋由紀子,森島済 出版社/メーカー: 成山堂書店 発売日: 2010/11 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 5回 この商品を含むブログを見る 多くの場合,気象になんらかの興味を抱いていても, 現実のフィールドに出て気象観測を実践する機会はなかなかありません. 実際には,ごく基本的で簡単な観測でさえも, やってみないと気付かない問題が多々あります. それらの問題に関する具体的な想像がみなさんはどれだけつくでしょうか? 本書は,身近なフィールドにおける気象観測を読者に「体験」させてくれます. 選ばれたフィールドは,「千葉県流山市」と「富士山」. 本書が,それぞれのフィールドで 「市街地の熱環境測定」と「大気境界層から自由対流圏までの気象測定」 に関する「体験」へと引率してくれます. それらの「体験」の中にフィールドで必要とされる 知恵と手法が巧みにちりばめられているという, なんとも見事な仕掛けの本なのです. 一回目はあっという間に読めてしまうはずですが, 何度か読み返してみることも強くお勧めします. きっと「体験」の中に潜む手法や知恵を何度も「発見」することになります. 2つのフィールドでワクワクする「体験」へ出かけてみるのに, わずか1890円の「参加費」は安すぎるくらいです.

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気象は”視覚的興味が理解の入り口”

史上最強カラー図解 プロが教える気象・天気図のすべてがわかる本 作者: 岩谷忠幸 出版社/メーカー: ナツメ社 発売日: 2011/01/19 メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 12回 この商品を含むブログ (5件) を見る 【主な登場人物のキャラをつかもう】 日常的に見ているテレビやウェブ上の気象情報. みなさんはどれくらいの興味で見ているでしょうか? 本書の第一部では,普段「情報」として捉えている様々な画像や説明文を丁寧にほどいています. フルカラーの図解が巧みに展開され, より親しみを持って能動的に読み解くためのコツを視覚的に捉えることができます. アジサイの色が青っぽくなったり,赤っぽくなったりする仕組みや 梅雨明け時にどの種類のセミが鳴くかなど, 動植物と天候変化の対応の説明もとても楽しめます. 【天気を予報する手順を知ろう】 天気予報が毎日伝えられるのは,もはや私達にとって当たり前になっていますが, その手順を知っている人は多くないはずです. それらの手順を紐解くのが第二部です. 気象庁がコンピュータで計算して基礎となる資料を作成し, 予報官と呼ばれる人達がその資料から天気図を作成したり, 重要な情報だけを抽出したり. その結果を気象予報士の資格を持ったキャスターがより親しみやすく, 伝わりやすい言葉で補いながら私達に伝えてくれています. 監修の岩谷キャスターの躍動感あふれる一日をたくさんの写真で紹介したり, 気象庁の現場のスタッフも登場して生の声が掲載されていたり, 天気予報の全ての手順にワクワクが満ちていることを感じ取れるはずです. そして最後の岩谷キャスターの一言に心を打たれます 「参考書だけでなく,空も見て欲しい」 【大気現象の仕組みと異常気象の中身】 虹,雷,雪の結晶,オーロラ. 美しい写真を眺めるだけでもこの第三部は十分楽しめます. なんでこんなに美しいんだろう? そう思ったら,イラストも交えて2ページ以内に すっきりとまとまった説明に目を通してみると, きっと「へえ!」の連続です. そうした視覚的に目を引く大気現象の基本的な仕組みを知ってしまうと, 異常気象というものの中身も今までと随分違った捉え方で深く理解できるようになります. 地球温暖化,という言葉だけは報道などでもいつも聞くけど, 本当にその意味を分かっていたでしょうか? 報道している人自身が実はあまりよく分からずに伝えている場合もかなりあるように思います. 温暖化問題に限らず,ゲリラ豪雨やヒートアイランド現象, エルニーニョ・ラニーニャなど聞いた報道からなんとなく情報を受け取るよりも, 能動的に考えて判断することができるようになると不必要な不安はなくなります. この本は,多くなりすぎた情報の波を能動的に乗りこなすきっかけに満ちています. きっかけをつかむための写真やイラストが一枚,また一枚と増えていけば, 本書を持っている価値は,そのたびに倍増すると思います.

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ある復興支援に関わる会でのスピーチ

Youtubeにアップしました. Please take a look at my presentation about the 2011 earthquake in Japan. Pidato saya pada pemikiran setelah bencana 311 telah diunggah di Youtube. “2011年(ねん)3月(がつ)11日(にち) 東日本大震災(ひがしにほんだいしんさい)の 後(あと)の1年間(ねんかん), 本(ほん)の執筆中(しっぴつちゅう)に考(かんが)えたこと.” 1 tahun setelah Gempa Jepang Besar Timur 11 Maret 2011, Saya berpikir bahwa dalam penulisan buku ini. ‘ 気象学(きしょうがく)の研究者(けんきゅうしゃ)として, 僕(ぼく)は,何(なに)をしたらいいのか? What can I do as a meteorologist? Sebagai seorang peneliti meteorologi, dan saya, apa yang harus saya lakukan? 研究者(けんきゅうしゃ)に最(もっと)も必要(ひつよう)なことは, 専門外(せんもんがい)の全(すべ)ての人(ひと)に “目線(めせん)を合(あ)わせて対話(たいわ)” しようとする姿勢(しせい) だと僕(ぼく)は思(おも)いました. What I have to do is, having a sincere dialogue with various people. Ketika saya membutuhkan “dialog yang cocok sekilas”, pikirku. 専門外(せんもんがい)の人(ひと)と “目線(めせん)を合(あ)わせた対話(たいわ)” を実現(じつげん)するような本(ほん)が書(か)けないか? My challenge is writing a book that is realizing such dialogue. Saya ingin menulis…

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本を執筆することで得られるもの

一言でその答えを言えば, 「良質な出会い(再会も含む)」 です. 拙著「梅雨前線の正体」 の発売開始が6月8日. それからまだ2ヶ月経っていません. なのにこの間で自分でも信じられないくらい, 多くのお誘いと出会いと感動がありました. たくさんあっても一つ一つの出会いが, もの凄く記憶にハッキリと残っています. 普段色々すぐ忘れるのに, その事自体に自分でも驚いています. そしてそれらが明らかに 自分を大きく変え, 成長させてくれ, 周囲にも良い変化を少しずつ作れていることを 実感しています. 本の執筆をさせて貰えることは, 最初から嬉しかったのですが, 正直言って執筆を通じて 自分に何が得られるのかを 把握できていませんでした. 「印税はいくらです」みたいな話も 書き終わってからしましたし・・・ お金が欲しかったわけじゃないのは 本当にそうなのです. でもタダではない何かを作り, お代を頂くということを実際にやると, 全く想像していなかった感覚を たくさん味わうことができました. 自分の創りだした作品に対して, 「お代を払ってくれる」 という行為自体に純粋に僕は感動しました. そして, それを読む, 読んだ感想をまとめる, 僕を含めた誰かにそれを伝える, それをきっかけにした新しい提案を考える, 新しい提案を実現しようと準備する, といった膨大な時間的対価を たくさん”払って”下さる方々と 次々に出会うことができました. おかげで, https://www.facebook.com/BaiuFrontID でも毎日お伝えしている通り, 感動の連続で休まる暇もなければ, 休む気にもなれない, という経験したことのない 知的興奮に満ちた1ヶ月半になってしまいました. そうか. やっと分かりました. 本が世の中にこんなにたくさんある意味が. 僕は今まで全然知りませんでした. でも今はハッキリと分かります. 売れても売れなくても,結果的な売上が何冊でも, Amazonの順位が何位でも,印税が何%でも, 必ずこれだけは本を書くと得られると. それが 「良質な出会い(再会も含む)」 です. 東京堂出版営業の郷田部長,鈴木次長,力久係長, 三省堂書店の理学書フロア担当のみなさん, 紀伊國屋書店のフロア担当のみなさん, 紀伊國屋営業の山下さん, 紀伊國屋書店電子書籍担当の新田さん, 気象キャスターネットワークの岩谷さん,田代さん, 気象キャスターネットワーク気象講座参加者のみなさん, 非常勤講師で授業を聞いてもらっている東京学芸大学1年生のみなさん, 第5回文教交流会でお会いした教育の未来を考えておられるみなさん, Twitterで毎日話しかけて来て下さるみなさん, Facebookで毎日「いいね!」をして下さるみなさん, Amazonで「いいね!」とレビューまでして下さるみなさん, 所属のJAMSTEC内でもこれまできっかけがなかったのに興味を持ってくださったり, 図書館で推薦してくださったり, 一般公開セミナーの動画を綺麗に編集してくださったりした方々, ・・・ 出版されてしまった後なので, 謝辞に記すことができませんでしたが, 本当に本当にたくさんの 得難い何かを与えて頂き, 心から感謝しています. これからもよろしくお願いします!

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ポジティブオンリー・テイク・ア・リスク( 前だけ向いて当たって砕けろ)。

今、修正のため自分の本を読み返してみると、もう我ながらアホかというほど、そんな感じです。 そんなにたくさん本読んでる方ではないですけど、構成、説明、デザイン、付録、索引、PV、あらゆる部分において、 「こんな本ねーよ!」 ってことでも思いつくままにほとんどのことが実現されつつあります。 「無理ならいいんですけど、、、こんなんできます?」 「すごい!!!!それは思いつきませんでした。やりましょう!!!!」 出版社の制作担当の方とこんなやりとりをこの2週間だけで何十回やったか分かりませんが、ダメ元のつもりが9割以上実現できちゃってます。 これまでこんなに強く「やればできんじゃん!!!」って思ったことない気がします。 本のこと以外で、 「やっても無理なんじゃないか」 と行動も起こさずに諦めてる、あるいは、諦めてしまったことすら忘れてることが結構あるような気がして、もう一回振り返りたくなりました。 ポジティブオンリー・テイク・ア・リスク。 #熱帯気象学の古典理論:positive-only wave CISKから語呂をモジったのは、勿論です。 #何ソレ?という人は、、、本当に気になったら調べてみてくださいね。

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本のチラシを自作してみた

学会でもお馴染みのアノ人達が続々と登場する 痛快アドベンチャー。 鬱陶しい梅雨を楽しみに変える見方とは? 自称世界一のスゴユル(スゴくユルい)研究者が 限界までハジけ切った渾身の問題作!! 「呑み会でも普通はここまでやらかさない」(著者談) 著者割引・送料無料\2000(税込定価\2520) 予約先着100名様にオリジナル特典付き 予約フォーム:http://bit.ly/HWaVSA 公式Facebookページ:http://on.fb.me/HQGQqC

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