日本に大寒波を引き込んだ張本人はインドネシアにいる

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日本は絵に描いたような大寒波襲来。

大概、ヤツがやってくると何処から来たのか、
ああ、シベリアか、確かに凄く冷えている、、、
という話になります。

しかし、
シベリアが寒いのはいつものことでも、
大寒波が日本にやってくるのは、
何かしら別の条件が整ったとき。

つまり、大寒波襲来には、
押し出す力と引き込む力の両方が
必要なのです。

シベリアから押すだけではないのです。

じゃあ、誰が引いてるのか?

それが日本の南5000kmに位置する
熱帯インドネシアにいるのです。

それが熱帯の巨大低気圧MJO。

巨大低気圧による巨大雨雲軍団MJO。

熱帯を支配する東風すら
ものともせずに東へ向かうMJO。

それどころか東風をひっくり返して、
西風まで吹かしてしまうMJO。

熱帯のMJOと寒帯の大寒波。

その遥か5000kmの間の繋がりを
見つけて視えないはずのみらいを
見通す技術が、気象学です。

観測船「みらい」が、今、
浮かんでいるスマトラ島西沖では、
この一ヶ月ひたすら続いたMJOの雨雲が
ようやく通りすぎていったところ。

MJOの真っ只中では、
わずか50km先のスマトラの山々すら、
モヤの中で全く見えなかったけど、
MJOが通り過ぎてしまえば、
稜線がクッキリと浮かび上がります。

今は、まだまだ分からないことも、
なんだよ、こんなにクッキリしてたのか、
と拍子抜けするような感覚で眺めるような、
そんなみらいがあるんでしょう。

科学は、みらいへ僕らを押すチカラ。

願いは、みらいから僕らを引くチカラ。

僕らは、現在の科学を過信してはいけない、
けど、そのみらいの進化は信頼できる。

信頼に足る根拠は、今、
目の前で科学を支えている
船員さん達の姿が教えてくれます。

これほど緻密に手を抜かずに
一つ一つ積み上げたものが、
信頼できないはずがない。

その信頼の上に立って、研究者は、
採れたてのナマの材料を調理していきます。

産地直送の天然素材にこだわった一品。

大寒波を引き込んだMJO、
MJOが熱エネルギーを受け取ったインド洋、
インド洋に熱を送り込む太平洋からの海流、
太平洋の熱分配が偏った今年のエルニーニョ、
エルニーニョを起こしたかもしれないMJO、

という感じで
延々とループしながら研究は、
つながっていきます。

アイデアを考えて、レシピを創り込んで、
実際に人前に出せるようになるまで、
何百人もの専門家の試食をお願いし、
公のもとに届けられるようになるまで、
まだまだとてつもない長い行程が待ってる。

たった一地点でたった一つの過程を
立証するにも無数の考え方を試して、
少しずつ固めていきます。

それが本当に将来、
何かの役に立つ日が来るのか、
行程が遠すぎてまるで見えないけど、
役に立つ日が来ることを疑ったら、
そこで試合終了。

それでも、
その長い長い行程を経ることこそが、
科学を信頼できる根拠です。

motesaku
気象楽者 海洋研究開発機構 研究員 東京学芸大学教員養成課程 非常勤講師(地学実験・気象楽プログラム担当) 39歳 気象楽者。 2012年「梅雨前線の正体(東京堂出版,2015年現在3刷り)」を上梓し、気象学を童話的ストーリーで「文系だから・・・」と苦手意識を持つ人達にこそ伝え、楽しみ、共に考える取り組みを始める。 しかし、ただ親しみ、楽しむだけでは、天気・気象に「受け身」のまま、情報に振り回されてしまう人が多いことに気付き、「能動的」に天気と付き合い、向き合うための活動として、「サイエンスパフェ」を始める。 2013年「天気と気象についてわかっていることいないこと(ベレ出版)」を上梓し、気象学と日常生活を楽しみながら能動的に結びつけるための方法を提案する。 2014年4月「ニコニコ超会議・ニコニコ学会β」に登壇し、4万人の視聴者の前で「JAMSTEC・・・大丈夫か」と心配される。 NHK教育テレビ「学ぼうBOSAI」の出演・製作を経験し、災害情報発信の在り方を模索する中、講演依頼の増加に伴って、全ての人が災害を倒すためにできることに向き合う「災害バスターズプログラム」を立ち上げる。 生い立ちや赤裸々なプライベートはこちらを。 モテサク伝説@storys.jp

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