プレゼンの筋書きを作るための覚え書き

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1年前まで、何かしら発表する、ということが決まったら、ひとまずPowerPointのファイルを新規作成、既に手持ちである図を適当に貼っておく、ということをしていました。

それが2010年の7月で変わりました。

スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン〜人々を惹きつけるための18の法則〜
リンク先のレビューのようにリーダーシップのあり方や啓発書としての示唆にも富んだ一冊ですが、僕に大きく影響を与えたのは次の部分。

1.「スライドのファイルを開く前に、手書きメモで筋書きを作るべきである。」
2.「相手が、何故あなたの話をわざわざ聞かなくてはならないのか、の理由を最初に話す。」

かの本はこの一年でプレゼンの回数以上に読みましたが、気象研究者は、「夢のある商品を売る」のとはまた少し違ったプレゼンの作り方をしなくてはいけません。従って、一回読んですぐ上手くなる、というようなハウツーものではないので、哲学をくみとりながら自分用のプレゼン作成法にアレンジしていくことが必要です。

まず、1は、それまでの自分のやり方を180度変えた根本的な部分です。
以前は、大まかに手持ちである図やグラフをスライドに貼って、それに発表者ノートをつけながら、なんとなく筋書きを書いていました。しかし、そうすると筋書きの全体像が見えにくいし、最初にあまり意図もなく並べた図の順番に無意識のうちに縛られて筋書きを書いてしまいます。
これを白地のメモ帳や裏紙でもなんでもいいので、紙と鉛筆でやると、全体像の見通し、一回書いたあらすじを何回でも壊してより良いつながりで組み直し、ということが、とても自由にできます。

次に2。自分が素敵だと思う成果でも、出だしでつまづくのはもったいない、ということは前から意識していたつもりでした。しかし、「相手が、何故あなたの話をわざわざ聞かなくてはならないのか。」という文章を見たときの「ドキリ!!」としたショックは忘れられません。そこまで厳しく自分に問いかけていたかと言われれば、全くといっていいほどしていなかった。相手の興味関心のツボがどこにあるかを想像する、その想像した興味関心と自分の話したい話題のどこにつながりがあるかをまず考える。それは、聴衆というお客様に対する最低限の「おもてなし」の気持ちです。それがなければ、相手は自分が招かれざる客だ、と思ってしまい心と耳を閉じてしまうかもしれません。

手書きメモの筋書き(ストーリー)に含まれるべき必須の要素は次の4つ。

  • 大見出し(ヘッドライン)

研究発表の場合、タイトルが堅くなりがちなので、分かりやすく書き下すとつまりこういうこと、という内容をできるだけ覚えやすいシンプルな言葉でまとめます。それが、結局、結論でもそのまま使えるような内容。

発表中に数回は繰り返して、自分はつまりこういうことをやった、という概要を相手の頭に叩き込めるようなインパクトを作れると最高だと思う(挑戦しているがまだ達成したことはない)。

  • あなたの話を聞くべき理由

聴衆は、他の発表が目当てでたまたまそこにいるだけかもしれない。
他に特に目当てもなく、なんとなくそこにいるだけかもしれない。
目当てはあなただが、何故あなたに興味を抱いているのかあまりはっきりしていないかもしれない。
あなたの話が自分にとって面白いかどうか判断するためにきているかもしれない。

そんな聴衆が「おお!これはちゃんと聞かなくてはっ!!」と身を乗り出すようなセリフを冒頭の相手がまだ集中力を維持しているうちに投げかける。

  • 情熱の根源(パッションステートメント)

私はこのプロダクトが素晴らしいと思う、なぜなら・・・
私はこの現象が本当に興味深いと思う、なぜなら・・・
私はこの手法に大きな将来性を強く感じている、なぜなら・・・

自分がそのテーマに何故それほどにまでのめり込んでいるのか、をはっきりと述べる。
発表者がのめり込んでもいないのなら、他人である聴衆は、それ以下の興味しかもたないことの方が普通だ(僕は人の発表を聞いていて、自分の方がのめり込んでしまうこともあるけれど、それも希にしかない)。

  • 主張すべき3項目(3つのキーメッセージ)

「3」という数字は、魔法の数字なのだそうである。
人の記憶において、3つまでの項目は、非常に頭に残りやすいのだそうだ。
「3匹のクマ」「三銃士」「だんご三兄弟
世の中、長らく人の頭に残るのは、「3」なのだといわれるとそういう気もする。
実際、一つだと思っていた成果から3つの重要な要素を探すと必ず出てきて、筋書きも俄然練りやすくなる。3つ以上言いたいことがあるときは、最重要の3項目のサブ項目に割り振っていく。

必須じゃないけど、うまく使えると筋書きが盛り上がる3つの要素。

  • 主役と悪役の設定(ヒーローの使命とヒールのもたらす実害を明示)
  • 隠喩・暗喩:例え表現だが、『…のようなもの』といった例えであることを明示しない文(メタファー)

例「人生はドラマだ」

  • 類比・直喩:『…のようなもの』といった例え表現であることを明示する例え(アナロジー)

例「マイクロプロセッサーはコンピューターにとって頭脳のようなもの」

motesaku
気象楽者 海洋研究開発機構 研究員 東京学芸大学教員養成課程 非常勤講師(地学実験・気象楽プログラム担当) 39歳 気象楽者。 2012年「梅雨前線の正体(東京堂出版,2015年現在3刷り)」を上梓し、気象学を童話的ストーリーで「文系だから・・・」と苦手意識を持つ人達にこそ伝え、楽しみ、共に考える取り組みを始める。 しかし、ただ親しみ、楽しむだけでは、天気・気象に「受け身」のまま、情報に振り回されてしまう人が多いことに気付き、「能動的」に天気と付き合い、向き合うための活動として、「サイエンスパフェ」を始める。 2013年「天気と気象についてわかっていることいないこと(ベレ出版)」を上梓し、気象学と日常生活を楽しみながら能動的に結びつけるための方法を提案する。 2014年4月「ニコニコ超会議・ニコニコ学会β」に登壇し、4万人の視聴者の前で「JAMSTEC・・・大丈夫か」と心配される。 NHK教育テレビ「学ぼうBOSAI」の出演・製作を経験し、災害情報発信の在り方を模索する中、講演依頼の増加に伴って、全ての人が災害を倒すためにできることに向き合う「災害バスターズプログラム」を立ち上げる。 生い立ちや赤裸々なプライベートはこちらを。 モテサク伝説@storys.jp

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