「茂木さん、今回、
天気予報が外れた要因を解説してください。」
先週2月6日,関東では,今年二回目の大雪予報が出て,
結果的に思ったより雪が降らなかったことをさして,
ある方からFacebook上でこうした問いかけを頂きました.
他にも随分と随分振り回された,
と感じられた方の声を多く聞きました.
みなさんはいかがだったでしょうか?
1月14日の大雪の際には,「さほどでもないはず」
という予報に反して,かなりの積雪となり,
やはり大きな混乱につながりました.
実際のところ,気象庁からも説明があるように,
関東の大雪予報というのは,とても難しく,
また,もし仮にバッチリ当たったとしても,
ある程度の混乱は避けられない,という側面があります.
ただ一方で,慌てたり,焦ったり,イライラしたり,
といったキモチの面については,予報の受け取り方によって,
もう少し落ち着いた楽な気分に出来るかもしれません.
実際,僕自身は,大雪の予報が当たるか,外れるか,
ということで,そうしたキモチ的な混乱は,
ほとんど感じたことがありません.
それは何故か?
今までちゃんと自分でも考えたことなかったんですが,
恐らく大きな理由の一つは,
「大雪予報の難しさの背景を理解している」
ことがあるように思います.
大雪だ,という予報が出ても,その難しさを知って
受け取ると,当たらない可能性も心のどこかに備えた上で,
行動できます.
逆に,雪の可能性があるけど,さほどでもない,という予報でも,
それが大雪になる可能性もアタマに入れて,状況を自分で,
能動的に見ながら過ごすので,誰か別の人にイライラ,
という焦点からは全く別のものに注目するようになります.
では,一体,関東大雪予報の難しさ,ってどういうことか?
冒頭の
「茂木さん、今回、
天気予報が外れた様々な要因を解説してください。」
という問いかけに,僕は下記のように答えました.
ちょっと長くなりますけど,
みなさんはどう感じられるでしょうか?
モテサクの回答:
「天気予報が外れた」場所と時間,
「天気予報が当たった」場所と時間,
両方あります.
個別に,こうだから,という要因は,
説明できないです.
代わりに何故難しいか,
ということを簡単に書きます.
まず,気温の予報が,どれくらい正しくできるか,
ここが問題です.
雪になるか,雨になるか,地上気温が3℃が分かれ目,
とよく言われますが,
3℃以下でも上空の寒気が弱ければ雨になりますし,逆もあります.
次に降水量の問題ですが,これは,一年中,
どうやっても定量的にかつ時間まできちんと当てる,
というのは,ほぼ不可能です.
定量的にそこそこ近いけど,時間が数時間ずれたり,
場所が数十kmずれたり,ということはどうしても起こります.
加えて,路面がどれくらい冷やされているか,
それによって,積雪する深さが左右されます.
これは単純にそのときの瞬間の気温だけでは決まりません.
雪の量がたくさん降っても,融けてしまえば,
積雪になりません.
積雪したとしても,雪の結晶の種類が,
細かい粉雪ならば大した積雪になりません.
これらだけではありませんが,こうした単純な要素だけでも,
どれくらい難しいかは,ご理解頂けるのではないかと思います.
今以上の精度を劇的に上げようとするなら,
例えば海の上でも無数に観測点を増やして,
コンピューターによる数値予報に入力する初期データを
完璧なものにする,といったことが必要です.
数値予報モデルの改善でも少しずつは良くなりますが,
初期入力値に間違いがあれば,当然限界があります.
今回も前回も,雪を降らせる張本人は,
日本の南海上を西から東に抜ける南岸低気圧と呼ばれるものです.
それが思ったよりも数十km北に,数十km南に,
思ったよりも早く通過,思ったよりも強く発達,
といった微妙なズレで,1月の大雪のようになるか,
今回のようなミゾレで済むか,別世界になってしまいます.
それぞれ振り回されて大変な思いをされた方には,
気の毒に思いますが,怒りの矛先は少なくとも
気象庁にむけるべきではないです.
参考:
思った以上に見識のある意見が多いです。これらの見解を呼び寄せ集める意味では、良かったのかも。“@kusk37: 猪瀬都知事の気象庁に関するツイートには、さまざまな意見がありますねぇ。 twitter.com/inosenaoki/sta…“”
— 茂木 耕作さん (@motesaku) 2013年2月9日
JRの運行方針とかも色々言われてるようですが,
少なくとも北関東ではあれだけ積雪したわけですし,
線路とダイヤの乱れが連続的に波及する事態を想定すれば,
当然の対処ではないかと思います.
モテサクの回答おわり.
ということで.
新潟で育ち,北海道で大学時代を過ごした,僕からすると,
「関東の雪に対する脆弱性がそもそもね・・・」
という一部の方の声も頷ける面があったりするわけですが,
それはお金も時間もかかることなので仕方がないとも思います.
そこで,一円もかからない,ある脆弱性に対する対策を提案します.
それは,大雪予報を受け取るときに振り回される
キモチ的な脆弱性.
その脆弱性に対しては,
予報を受け身ではなく,
能動的に受け取ることで,
かなり解決出来る気がします.
つまり,自分の感覚と経験値と+αで気象庁のデータ,
という順序で,基本自分の感覚を出発点に予報を受け取るのです.
すると,自分の判断を軸にして当たったら,
(ほとんどは気象庁のおかげだけど)
単純に超ウレシイ.
自分の判断で,外れたら,悔しい人もいるでしょうけど,
僕は,より深い興味が湧く,っていうタイプです.
ん〜?どこを調整したらより当たるんだろ・・・
って思うんですね.
その価値観の中では,誰かのせいで,くそーー,みたいなの,
一切ないですから,どんだけ振り回されても,
余計興味が湧くだけでネガティブな感情が生まれない,
という大変オトクなメリットがあります.
仕事などで1分1秒を争う,というようなことは,
僕にはあまりないですが,
そもそもそういう予報が出てるときに,
そういうムリなタイトスケジュールで動こうとしないように,
色々手を回しておくことは可能です.
その無闇にタイトなスケジュールは,
その日に限って余裕を必ず持たせる,
それは,カッコよく言えば,
危機管理の一つではないかと思います.
ま,単純に,一日のキモチがネガティブになるか,
ポジティブに転換できるか,
それだけでいいと思うんで,
是非,やってみてくださいね.
(今年は寒いのでもう一度くらい
来るかもしれないですしね)
因みにワタクシは,気象予報士の資格はないので,自分の予測判断を人様に伝えてアドバイスできる立場にはありません.
でも自分の行動のために自分の判断を使う,というのは,何も資格が無くなって,誰でもできることですし,実際,みなさんそうされていると思います.
素人だからワカラン,だから結果だけ誰かプロが教えて,じゃなくて,素人なりに生きた年数だけかけがえの無い経験をもとに自分にカスタマイズされた判断をし,さらにその判断の精度を高めるようにする,ということがオススメしたいことです.
そこで使える補助の情報として,気象庁なり,気象予報士なり,民間気象会社からのものを受け取ったら,全然違った気分になるはずです.