MR1708感想文「MR1504(Pre-YMC)とMR1708(YMC)の比較」


 2年前と比較して、今回最も印象に残ったのは、とにかくめちゃくちゃ船酔いしたこと。前半のTRITONミッションから測線に入るまで、ずっっっと酔い止めのお世話になってしまった。酔い止めを飲み過ぎてはいかんと思い、測線に入る前の4日間酔い止めをやめて慣れようと試みたが、寝てもさめても頭痛と吐き気に襲われるばかりで全く慣れなかった。諦めて再びトラベルミンのお世話になり、定点中もターボマップの夜シフトに慣れるまでしばらく念のため、酔い止め漬けになった。

海嶺を越えて縁辺海に入れば外洋のような揺れはないはず、と2年前の経験をそのままあてはめて希望的に予想していたが、全く当たらず、外洋と変わらぬ波高2−3mの日が続いた。そういえば、2年前は、MJOが来る前の穏やかな東風で風速5m/s以下の日がほとんどだった。

今回は、定点に入る頃には既に1つ目のMJOが通過した後で10m/s以上の風速は降水系が来る度に当たり前のように吹きすさび、ときに20m/sを超えた。今考えれば当たり前だが、海嶺の内側だろうと強い西風のもとでは波が高いのだ。自分の主観的な経験に基づく希望的な憶測が高い確率で正しくないことを痛感させられた。だからこそ、客観的なデータをしっかり比較する価値を改めて強く感じることができた。

 2年前は、1日1回実施した海洋乱流観測を1日8回に増やしてその夜シフトに入った。定点の位置がスマトラ西岸から50kmか100kmかという違いは意外と大きそうだ。観測期間のほとんどがMJOの通過前だったか、通過後だったか、という差もはっきりありそうだ。

実際、SSTは30℃超えが当たり前でMJO通過時に1℃下がったという変化の振幅が大きかった2年前に比べて、今回は28.7-29.1℃の0.5℃以下の範囲で規則的に日変化を繰り返しており、大気場もその影響を大きく受けているはずだ。一方で、塩分は2年前よりも激しく変化し、流向・流速の変化も激しかった。すなわち、定点の時系列には、混合層の上部、下部、水温躍層、躍層より下で様々な方向からの移流を考慮する必要がある。移流の影響を流速が20cm/s前後で流向も安定していた2年前は、ほとんど感じることがなかった。

しかし、今回は、塩分のプロファイルを一本ずつ見ているだけで、はっきりと別の海水が特定の層に入ってくることを見分けられるほど大きな変化があり、その目まぐるしさがとても楽しかった。それに概ね対応した乱流の強弱も基本的には捉えられたように思われる。

 トラブルの多い中でも、観測技術員の末吉さん、徳長さん、大山さん、多和田さん、觀測士の村上さん、JAMSTECの堀井さん、東大の松岸くん、ハワイ大のケルビンさんには、本当に助けて頂いた。また、甲板部の方々には、デリケートな投入作業を昼夜問わず丁寧にして頂いた。ブリッジと機関部の連携による操船もキャスト毎に流れが複雑に変わる中、安全に対応して頂いているのが今回は前回よりよく理解できた。本当に感謝である。

 船内生活においても、前回と大きく異る条件を体験することができた。前回は上甲板の一人部屋だったが、今回は4人部屋を堀井さんと2人で使用というある意味空間的な贅沢を享受した。

船酔いを紛らわすのに堀井さんがずっと話し相手になってくれたことは大きかった。船内放送で流れる「半沢直樹」を見たり、堀井さんの持ち込んだギターを弾いたりするのも船酔いを紛らわすのに不思議なほど有効だった。お互いに本来の専門が海洋学と気象学で違っていながら、大気海洋相互作用研究をする者同士、知見と新鮮なアイデアを気楽に共有し、船内での初期解析を進めるモチベーションにもなった。

そうした会話の中から生まれた船内での疑問や興味深い作業を自分なりに取材し、ブログに記事化する作業も楽しかった。ブログ書きは一つの生きがいとなった。実際、ただ眺めているよりも書こうとすることで勉強になり、日本語版と英語版の両方を常に書くことは苦労ではなくとにかく楽しかった。

2年前の経験に惑わされつつもそれを活かして進化できたと思う。

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