茂木耕作の環境場としてのMR1504観測航海 

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相互作用が重要です。

大気と海洋の。

その通りだと
研究をすればするほど
納得はします。

でもそれと同時に、
自分と自分の周りの相互作用にも、
そうした自然の理と似たようなものを
感じるようになってきました。

本当かどうか確かめるには、
自分を色んな環境に移動させて、
自分との周りの相互作用を
観測する必要があります。

観測船「みらい」に、
自分にとって普段の大気中心の研究テーマから
少しずれた海洋乱流観測(ターボマップ)に
挑戦する目的で乗船する、
という環境条件は、
相互作用を理解する上で絶好の機会です。

不安になったり、
大き過ぎる期待でソワソワしたり、
周りをいつもより伺えば伺うほど
よくわからなかったり、
そんな感情は、
相互作用の一つとして
もみくちゃになってやってきます。

そして早速やってしまいました。

必要機材のウィンチアームの積み忘れ。

関根浜出港の冒頭から
自分の周りに迷惑をかける失敗から
航海が始まりました。

八戸港で積み直し、
安堵と申し訳無さでぎこちないまま動きのまま、
黒潮越えで大した揺れでもないのに早速船酔いし、
アネロンにまでお世話になってしまう展開。

こういう情けない感情で
満たされた環境場における茂木耕作は、
学生に救いを求める傾向があることが
よく知られています。

東大、名大、高知大から乗船していた
個性と才能溢れる面々の
研究室あるあるネタで少しずつ
精神的な安定度を回復していきました。

定点観測に入る前の船内セミナーでは、
航海前半での
「茂木耕作の環境場の特徴と相互作用」
と題して初期結果を報告しました。

自己紹介を通じて、
過去の失敗や過去の幸運を
これからの観測現場でお世話になる方々に
開き直って話してしまえば、
茂木耕作の活動度は単調増加傾向を示します。

定点に入り、
ターボマップによる海洋乱流観測が開始されると、
初めての挑戦で
どんなデータが上がってくるのか
検討もつかない見通しのなさが、
逆に毎日を楽しくさせることを知ります。

観測技術員、
甲板部の方々の作業ぶりは、
茂木耕作に心からの敬意と感謝を
抱かせました。

細かい作業から力仕事まで、
こういう現場の力が
科学の信頼の根底にあるんだと、
今更ながらに実感しました。

茂木耕作の環境場としてのMR1504観測航海は、
関わって下さった全ての方々との相互作用を通じて、
結果的に明らかな「幸運」をもたらしました。

下の図は、その幸運を視覚化したものです。

12月10日から12月11日は、
ターボマップのセンサーが
壊れたのかと心配になるほど、
海洋表層が静穏でした。

 しかし、12月12日以降、
MJOの通過によって西風の風速が
一気に10m/s以上になると、
表層の乱れが明らかに大きくなりました。

海洋表層が風で乱されるのと同時に、
海から大気に熱が奪われ、
海面水1℃以上急激に下がっていきました。

つまり、相互作用が重要です。

大気と海洋の。

お互いに何かを手渡し、
何かを与え、
世界を変えていきます。

茂木耕作の環境場としての
MR1504観測航海は、
関わって下さった全ての方々との
相互作用を通じて、
結果的に明らかな「幸運」を
もたらしました。

冒頭に示した仮説は、
信憑性が高まったと言えます。

今後も更なる検証を
重ねることが求められます。

motesaku
気象楽者 海洋研究開発機構 研究員 東京学芸大学教員養成課程 非常勤講師(地学実験・気象楽プログラム担当) 39歳 気象楽者。 2012年「梅雨前線の正体(東京堂出版,2015年現在3刷り)」を上梓し、気象学を童話的ストーリーで「文系だから・・・」と苦手意識を持つ人達にこそ伝え、楽しみ、共に考える取り組みを始める。 しかし、ただ親しみ、楽しむだけでは、天気・気象に「受け身」のまま、情報に振り回されてしまう人が多いことに気付き、「能動的」に天気と付き合い、向き合うための活動として、「サイエンスパフェ」を始める。 2013年「天気と気象についてわかっていることいないこと(ベレ出版)」を上梓し、気象学と日常生活を楽しみながら能動的に結びつけるための方法を提案する。 2014年4月「ニコニコ超会議・ニコニコ学会β」に登壇し、4万人の視聴者の前で「JAMSTEC・・・大丈夫か」と心配される。 NHK教育テレビ「学ぼうBOSAI」の出演・製作を経験し、災害情報発信の在り方を模索する中、講演依頼の増加に伴って、全ての人が災害を倒すためにできることに向き合う「災害バスターズプログラム」を立ち上げる。 生い立ちや赤裸々なプライベートはこちらを。 モテサク伝説@storys.jp

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