楽しい議論の作り方

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気象に限らず、研究を行っている者にとって、「議論する」ということは、最も重要な活動の一つ。

これを如何に有意義なものにできるか、如何に楽しめるかは、研究を続ける以上、永遠のテーマです。
論文の文章を練り上げる過程での文字を通じた議論は別の機会にして、学会等で生身の声を通じて行う議論について考えてみます。

議論が楽しいなんて研究者たるもの当たり前、と言いたいところですが、いつも議論の輪にうまく入れないとか、疑問はあるけど発言に値するものなのかとか、悶々としてるうちに楽しめずに終わることも多いものです。

僕が思うに、うまく発言できない、議論の輪に入れない、っていうのは、大概参加人数が多くて、質疑の時間が短いときです。

だからまず、質疑というか議論に使える時間を十分に長くとっておく、というのは第一条件。どうしても企画者側になると、使える時間を講演数で割って、、、というプログラム作りをしてしまうことが多いのです。講演時間を短くしてでも議論の時間を十分に確保する、というのは、「場が持たなかったらどうしよう」という漠然とした不安から結構勇気がいります。でも、初めて聞く話に30秒で本質をついた質問をして、それに発表者も見事な回答を10秒でまとめる、なんてのは不可能なので、本当に議論が大事だと思うなら十分に時間をとることを考えるべきです。場合によっては「総合討論」という時間が、一番最後にあったりするのですが、講演者の時間オーバーに押されて無くなってしまったり、各講演を一生懸命聴くのに疲れて頭が回らなかったりで、なかなかうまく楽しめないことが多々あります。

その第一条件をクリアしている場なのに議論の輪に入れない、ということもあります。内輪のゼミなど、時間はたっぷりあって、延々と議論が続く、ということはよくあると思います。でもそいういうときにありがちなのが、発言者が偏って、発言出来ない人と議論している人の温度差ができてしまうこと。

これってしょうがないことなのかな?発言できない人が発言できるように経験と知識と技術を磨くしかないのかな?

長い間、僕はどんな議論でも発言できるようにと努力しつつ、議論に参加できることも増えましたが、それでも駄目なときは駄目です。しかも、発言したからといって、「楽しい議論をした」という充実感が得られるとは全然限らないわけです。

しかしふと気付いたのが、飲み会で自然に起こる議論って、とても楽しくて有意義なことが多い、ということ。アルコールがなくてもこれが研究集会なりの場で上手く実現できたらいいのに、とよく思うようになりました。

アルコールがないとやっぱり無理?

当然だけど、答えはNOです。飲み会で起こる議論が楽しいのは、アルコールのせいじゃないと思います。
「楽しいのは、話す相手の顔が見えているから」だと思うのです。
大人しくて議論の場で発言するのが苦手な人も、話す相手の顔が見えていれば、自分の素直な意見や見解が自然に出てきます。

ならば、楽しい議論を作るには、そういう状況を作ればいいのでは?

大人数が集まっているときも、発表者VS聴衆全員、という形ではなく、発表者も聴衆も合わせて、数人ずつのグループにして、相手の顔が見える状況で議論をする、つまり「グループ討論」です。
発表者の内容についてどういうところが疑問だったかでもいいし、発表者が提示した問いについてそれぞれの意見でもいいですが、4-5人の単位で話すと全ての人が無理なく発言でき、とても満足感の高い議論ができます。グループ討論で持ち上がったことを、各グループの代表が簡単にまとめて全体に報告すると、そこからもまた自然に議論ができます。

グループの分け方は、ランダムでもいいし、話題によっては、肩書きの近い人同士でまとめても面白いと思います。
僕の経験では、1グループ4−5人がいいと思います。
大人数が集まったときの飲み会でも、自然に会話するメンバーがまとまっていく単位を見ていると、面白いことに大体4−5人なのです。
なので結構普遍的に「議論に適した人数が4−5人」なんじゃないかな、と。

そう思い始めてから、自分が幹事や発表者になった集まりについては、内輪のゼミから研究集会などいくつかのところで試して外したことがありません。
みなさんも是非試してみて下さい。

motesaku
気象楽者 海洋研究開発機構 研究員 東京学芸大学教員養成課程 非常勤講師(地学実験・気象楽プログラム担当) 39歳 気象楽者。 2012年「梅雨前線の正体(東京堂出版,2015年現在3刷り)」を上梓し、気象学を童話的ストーリーで「文系だから・・・」と苦手意識を持つ人達にこそ伝え、楽しみ、共に考える取り組みを始める。 しかし、ただ親しみ、楽しむだけでは、天気・気象に「受け身」のまま、情報に振り回されてしまう人が多いことに気付き、「能動的」に天気と付き合い、向き合うための活動として、「サイエンスパフェ」を始める。 2013年「天気と気象についてわかっていることいないこと(ベレ出版)」を上梓し、気象学と日常生活を楽しみながら能動的に結びつけるための方法を提案する。 2014年4月「ニコニコ超会議・ニコニコ学会β」に登壇し、4万人の視聴者の前で「JAMSTEC・・・大丈夫か」と心配される。 NHK教育テレビ「学ぼうBOSAI」の出演・製作を経験し、災害情報発信の在り方を模索する中、講演依頼の増加に伴って、全ての人が災害を倒すためにできることに向き合う「災害バスターズプログラム」を立ち上げる。 生い立ちや赤裸々なプライベートはこちらを。 モテサク伝説@storys.jp

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