研究成果一般向け発信の意味

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ちょっと前の話題ですが,

2012年のノーベル生理学・医学賞が決まった

京都大学山中伸弥教授のインタビュー記事で,

研究成果発信の意味について触れられています.

「研究者を“憧れの職業”に」
ノーベル山中伸弥京都大学教授

山中伸弥教授

山中教授は,

”日本では研究者の地位があまりにも低く,

魅力的な仕事に見えていない”

ことが,

”深刻な理系離れ”を招いている”

という見解を示しておられます.

そしてどうすべきか,という点の一つとして,

”自分たちの仕事について,一般の人たちの分かる言葉で,発信していくべき”

”日本を支えているのだという誇りを内に秘めるだけでなく外に出すべき”

という発信の重要性を強調しています.

次の言葉は,研究者の立場,あるいは研究者を支える立場や組織に

いる方なら誰もが突き刺さるように感じることではないでしょうか?

”日本の研究現場は、今危機に瀕しています。

東京電力福島第1原子力発電所事故が起こり、

原子力の安全神話は崩れました。

科学者は良いことばかり言って、

重要なことを隠しているのではないかと、

科学者に対する不信感やアレルギーが高まっているかもしれない。

こういう時期だからこそ、

科学者からの情報発信が大切なのではないでしょうか。”

僕もこれとほぼ同じことを思い,某所で

ある復興支援に関わる会でのスピーチ

スピーチしたりしてます.

一方で,そうした理想論だけではなく,

”発見した時は、論文を書きたくありませんでした。

論文を書いたら、すぐさまライバルの研究者たちが、

こぞって追いかけてくるのが分かっていたからです。”

というジレンマにも率直に語っています.

そのジレンマを解消するために

”プロのサポートスタッフを雇用する枠組み”

の必要性は,研究者なら誰もが感じるはずですが,

そこに対する理解がもっと多くの人に共有されたら,

状況はもっと健康的になるのではないかと感じました.

これは分野によって,特許の問題が絡んだり,

産学連携があったりなかったり,事情は少しずつ

異なることなので一概に正解の見える話でもありません.

地球科学分野での例として,NASAでは,研究成果の発表は,

非常に厳しく管理されてると聞きます.

一方で組織としては戦略的に公開するチャンネルを開いてて,

何百ものコメントが寄せられる窓口を設けています.

NASA Youtube Channel

これなら,一方では成果発信を厳重に管理していても,

「研究者たちは隠してる」と感じない気がしました.

これはこれでアメリカの作り出したバランスなんだと思います.

日本は日本であちこち条件が違いすぎるので

単純に個々の取り組みを真似しようとしても

上手く行かないでしょうが,

「研究者・研究組織が知見や見識を公に発信する」

ということへの意識は,素直に学ぶべきだなと思っています.

そして,僕が感じているのは,

「動画の利用は何らかの形で間違いなく必要」

だということです.

一番大きいのは,

「会ったことないのに知り合いのような親近感」

が信頼を構築する上で圧倒的に有効に働くことです.

音声,映像,字幕,その全てを合わせて,

ノーコストで誰でも発信できるプラットフォームとして,

Youtubeの利用は業界を問わず避けて通れない気がしています.

別に学会発表じゃなくてもいいと思います.

発信できる素材,研究者として誰でも必ず何か持ってるはずです.

何を動画で発信できるか,一度考えてみてはどうでしょうか?

研究者の発信の意味は,

研究業界全体の状況を支え,

好転させていくための”投資”のようなものではないか,

と僕は思います.

組織として取り組めば,きちんと組織にリターンはあると思います.

個人として取り組んでみて,僕は本当に大きなリターンを

得られていると実感しています.

参考文献:
研究発表動画Web公開の魅力と危険

学術講演動画公開の3つのメリット

motesaku
気象楽者 海洋研究開発機構 研究員 東京学芸大学教員養成課程 非常勤講師(地学実験・気象楽プログラム担当) 39歳 気象楽者。 2012年「梅雨前線の正体(東京堂出版,2015年現在3刷り)」を上梓し、気象学を童話的ストーリーで「文系だから・・・」と苦手意識を持つ人達にこそ伝え、楽しみ、共に考える取り組みを始める。 しかし、ただ親しみ、楽しむだけでは、天気・気象に「受け身」のまま、情報に振り回されてしまう人が多いことに気付き、「能動的」に天気と付き合い、向き合うための活動として、「サイエンスパフェ」を始める。 2013年「天気と気象についてわかっていることいないこと(ベレ出版)」を上梓し、気象学と日常生活を楽しみながら能動的に結びつけるための方法を提案する。 2014年4月「ニコニコ超会議・ニコニコ学会β」に登壇し、4万人の視聴者の前で「JAMSTEC・・・大丈夫か」と心配される。 NHK教育テレビ「学ぼうBOSAI」の出演・製作を経験し、災害情報発信の在り方を模索する中、講演依頼の増加に伴って、全ての人が災害を倒すためにできることに向き合う「災害バスターズプログラム」を立ち上げる。 生い立ちや赤裸々なプライベートはこちらを。 モテサク伝説@storys.jp

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